お婆さんと万金丹

 今からおよそ百年あまり前の話である。ある村の名主の家のお婆さんは、いつも威張っていて、そのうえ小言ばかり言うとったので、子供たちから鬼のようにきらわれとった。家の中で遊んでいると、「家の中が汚れるから外で遊べ」と言われるし、庭で遊んでいると「植木が折れたらおえん」と言うし、あれも「おえん」これも「おえん」と言って、子供たらをしかるばっかししとった。それで、「おえん婆さん」という名前がついとった。

 そのお婆さん、ある日のこと急に腹痛をおこした。すぐにお医者を呼んで手当をしてもらったがちっとも良くならず、苦しんどった。
 ひとりの子が「薬をもっていってあげよう」と言いだした。そしてお婆さんを見舞いに行くことになった。
 子供たちは、近所に住んでいた物知りのじいさんに頼んで薬をもらって、おそるおそる、お婆さんの見舞いに行った。

 病気で苦しんでいたお婆さんは、子供たちが大ぜい見舞いに来てくれ薬までもってきたというので涙を流して喜んだ。さっそく、その薬を飲んでみた。不思議なことに 今までの痛みはうそのように止んでいた。
 それから後は、子供たちがどんなに暴れて遊んでいてもちっとも叱らなくなった。

 あとで子供たちが、まんごじいさんにいったいどんな薬をくれたのか聞いたら 、「あの薬はなあ、万金丹いうてのう、ハナクソをもんだ薬じゃあ」と教えてくれたので、子供らは歓声をあけて喜んだ。

 「越中富山の反魂丹(はんこんたん)、ハナクソもんで万金丹、それを飲むのが、あんぽんたん」いうて、大きな声を張りあげて歌うたそうな。


 山陽町広報誌の「ふるさと探訪」から、許可を得て転載。